石田さんとの電話が終わり、
かっちゃんへ電話をイソイソと入れた。
もちろんかっちゃんにはこの事は言えなかった。
理由は二つある。
1つは仕事の話しかしてないとは言え、他の男の人に電話をしている
なんて聞いたら、心配するだろうと思ったから。
もう1つは私の仕事の話になんて全く興味を示さないから。
からすると私はのんびりして見えるらしく
「仕事ちゃんと出来てるの?」とまで言われた事がある。
その時私はムキになって説明したけれど、
「いやいやいや・・・!」と笑い飛ばしていたっけ。
彼と真面目な話をするなど無駄な事なのだ。
無駄と言っては酷いかもしれないけれど
そう感じていた。
それを一番最初に感じたのは付き合い始めてすぐの事だった。
私は母を17の時になくしている。
その事を付き合い始めのときにいつも話をする。
Y
や
金田さんにもすぐに話した。
そして
かっちゃんにも同様にした。
大抵付き合い始めと言うのは誕生日や血液型、家族構成などの話が出る。
私は私を知ってもらいたいからこそ、相手に母の事を話をする。
なぜなら母がなくなってから、私は大きく変わった。
それは周りにいる人間をよく見る事。
母がなくなった時、学校をしばらく休んだ。
再び登校し始めたとき、クラスメイトのある女の子が声を掛けてくれた。
彼女とは普段話などした事もなく、ビックリしたものだった。
正直、彼女にはマイナスイメージしか持って居なかったのに
彼女は私に「大丈夫?」と気遣ってくれた。
こういう事って周りからすると言い難いものだと思う。
仲良しグループの子たちでさえ、言いにくいようで
そんな事言わなかった。
それでも尚彼女は私を心配し、声を掛けてくれた。
いたく感動し、同時に情けなかった。
そんな彼女にマイナスイメージしか持って居なかっただなんて…。
イメージや噂などで人を判断してはいけない。
もっと周りの人間をよく見ようと心に誓った瞬間だった。
これらの事を知ってもらいたいが為に話をする。
Yも金田さんもよく話を聞いてくれた。
でもかっちゃんは・・・
無反応だった。「私は母をなくしているんだ~」「・・・」私の方を見ず、前を向いて一言も発しなかった。
だからそれ以上の事は話して居ない。
なんでなくなったのか、いつなくなったのか、、、
当時どう思ったのか。全て。
その時始めて「この人と付き合って大丈夫かな・・・」
そう思ったものだった。
でも根っからのお人好しなのか、彼はきっと
「それ以上は彼女(私)が言い難いんじゃないだろうか」
と考えているんじゃないかと思い、気にしないようにサラッと流した。
私を知ってもらいたいと思って話をしたのに
サラッと流してしまったのだ。
それが間違いの元だった。